サイクリスト医師リエチ先生の自転車生活のススメ③ 自転車ライド中に怪我をしてしまったら?〜打撲などの応急処置編〜

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自転車通勤からサイクルライフをスタートし、今ではトライアスロンにも出場する整形外科医のリエチ先生こと蔵本理枝子さんが、自転車で健康になる秘訣を伝授! 第3回は自転車ライド中に怪我をしてしまった場合の応急処置法について解説してもらいます。

蔵本理枝子/医療法人社団理光会 いとう整形外科副院長
日本整形外科学会認定専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、障がい者スポーツ医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。整形外科医として勤務する傍ら、運動器(骨、筋肉、関節など)の痛み一般、スポーツに関わる痛みで悩む人々へ向けて、スポーツ雑誌、インターネットサイト、スポーツ新聞などのメディアを利用して情報を発信している。

自転車を走らせることは楽しいですが、屋外で楽しむスポーツですので、落車してしまった場合などには怪我をしてしまう危険性もあります。自転車の怪我では臀部(お尻)や脚の打撲、すり傷、鎖骨や肋骨骨折を起こすことが多いですので、今回は命に関わるような怪我ではなく、打撲、捻挫、骨折の初期治療について紹介したいと思います。

まずは「安全な場所に移動」が重要! 近隣の病院を受診する前に応急処置を行いましょう

自転車で事故や落車してしまった場合、動けるようでしたら、まずは安全な場所に移動しましょう。
「ヘルメットにキズがあって頭や首の怪我がある」「大量の出血をしている」「脱臼や骨折を疑うひどい変形がある」「骨折を疑う部分から出血している」場合は重症ですので、救急車を呼びましょう。仲間が落車をして、このような症状や意識がない場合などもすぐに救急車を呼ぶようにしてください。
「冷や汗が出る」「気持ちが悪い」「体重がかけられないくらい痛い」「腫れや内出血がひどい」時も骨折や脱臼などの可能性があるため、無理せず救急車を呼ぶか近くの病院を受診しましょう。
救急車が到着する前、病院に行く前にこれから説明する応急処置を行うことが重要です。

安静・冷却・圧迫・挙上の「RICE処置」で炎症を抑えて怪我の拡大を防ぐことが可能

応急処置は、Rest(安静)・Ice(冷却)・Compression(圧迫)・Elevation(挙上)の4つの手当てを受傷直後に行うことが重要です。頭文字をとって「RICE処置」と呼ばれるこの4つの手当てを行うことで、怪我による炎症を必要最小限に抑え、怪我の拡大を防ぐことが可能となります。

●Rest・安静:患部を安静にする
すぐに運動を中止し、安静にします。動き回ると腫れや出血が広がり、回復に時間がかかることもあるので注意しましょう。その上で、患部に副子(ふくし・患部に添えて固定する機材)を当てる、もしくはテーピングなどで固定して局所を安静にします。患部に添えるものは木の枝や段ボールなどでも構いません。

●Ice・冷却:アイシングを行う

ビニール袋や氷嚢(ひょうのう)に氷と水を入れて、タオルなどで包んで冷やすのがオススメです。怪我をした直後から1回20分前後を1日数回繰り返します。怪我の程度によって異なりますが、1〜3日間は冷やすようにしましょう。サドルバッグの中にポリ袋を数枚入れておき、コンビニなどで氷を買えば、病院で受診する前から冷却できます。
しかし、霜のついた氷や保冷剤、コールドスプレーは凍傷を起こすことがあるので注意しましょう。冷湿布は、炎症を抑えて痛みを楽にする効果がありますが、冷やす効果はほとんどありません。

●Compression・圧迫:包帯などで圧迫固定をする

弾性包帯などを用いて圧迫固定します。圧迫することで腫れが広がるのを防ぎ、患部が安定します。テーピングの知識があればそれでも構いません。圧迫が強すぎると血流障害や神経障害を起こすため、圧迫した先が痺れたり、皮膚の色が悪くなっていないか小まめにチェックしましょう。

●Elevation・挙上:怪我をした部分を心臓より高く上げる
身体の部分を現在の場所よりも高い位置に上げることを挙上(きょじょう)と言います。怪我をした部分を心臓より高く持ち上げることで出血が軽減され、腫れやアザの軽減につながります。

応急処置後は症状が軽く見えても病院へ! 初期治療が重要です

「RICE処置」を行った後、症状が軽かった場合であっても病院に受診することをオススメします。打撲・骨折・捻挫それぞれ、怪我を負った後に考えられる症状を説明します。

●打撲
皮膚の下の組織が傷ついて血管が切れ、中で出血してしまった状態が打撲です。よくある怪我ですが、ほっておくと、ひどい場合はどんどん腫れてくるので注意が必要です。
奥の筋肉に傷がつくと、身体の中で筋肉がパンパンに腫れて逃げ場がなくなり、血管や神経を圧迫して正常な部分まで傷が広がることがあります。これはコンパートメント症候群と呼ばれ、ひどくなると筋肉を入れている筋膜を切る緊急手術をすることもあります。
また打撲部が感染することもあり、血が止まりにくい薬を飲んでいる方は、出血がなかなか止まらず、血の塊を作ることもあります。膝や肘などでは打撲した部分に水が溜まる滑液包炎や神経のしこりができて、痛みが慢性化することも。さらにレントゲンでは異常がないにも関わらず骨挫傷という骨の怪我を起こしていることもあります。なかなか改善がない場合は整形外科で相談するといいでしょう。

●骨折
強い痛みが受傷直後より続くことが多く、痛みのために動けないことも。鎖骨骨折を疑う場合は、脇を締めて移動し、痛い部分をアイシングしましょう。手持ちのタオルやハンカチで三角巾のように腕を吊ることができると楽でしょう。手術が必要になることが多いので、整形外科をなるべく早く受診しましょう。肋骨骨折の場合は息が止まるような強い痛みが起こります。笑ったり、深呼吸したり、咳をすると痛みます。通常は6週間程度の時間が経てば自然に治りますが、肺に傷がついていることもあるので、一度、整形外科を受診すると安心です。

●捻挫
足首やひざなどに起こることが多い怪我です。骨をつなぐ靭帯が伸びたり切れたりしているため、腫れて関節が不安定になります。弾性包帯で関節が安定するように固定し、圧迫するといいでしょう。初期の治療が重要になるので、診断のために整形外科の受診をオススメします。

次回はすり傷について説明します。

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