前回は30分間で走行した時の平均パワーの数値と、自分が感じる感覚とをすり合わせた入門手順を紹介しました。次のステップは、自転車パワートレーニングのメニューを決める際の指標を設定するための“FTPテスト”を行います。
おおよそ1時間を全力で走る切ることのできる平均パワーの数値がFTP。屋外で途中で停車せずに走り続けるルートが確保しにくい場合は、一定条件で走り続けることのできるローラー台でのテストがオススメです。
アドバイス/中田尚志さん Peaks Coaching Group
自転車パワートレーニングの第一人者ハンター・アレンが創設したPeaks Coaching Groupのプライム認定コーチ。
2013年全米自転車競技連盟パワートレーニングセミナーを終了。2015年にトレーニングピークスユニバーシティを受講し、最先端のパワートレーニングを学び、現在まで15,000以上のパワーデータを解析した実績をお持ちです。2016年から京都を拠点に、パワーベースのコーチングを日本で展開。自身も日本・アメリカでレース経験を持つサイクリストとして、一般のサイクリストに向けての実体験に基づいたアドバイスにも定評があります。
Peaks Coaching Group
ステップ① 身体が温まるまで20分前後のウォーミングアップ走
計測を開始する前に、まずは20分前後リラックスしたペースで走るウォーミングアップ走を行いましょう。身体が温まらずにテストを行うと怪我や故障につながったり、ベストなパワーが出ないので必ず行いましょう。
ステップ② 5分間の全力走で追い込む
身体が温まった後、5分間ですべてを出し切る(オールアウト)全力走(VO2MAX走)に移ります。スタートから全力を出そうと頑張らずに、最初の1分間は徐々にペースを上げていき、残りの4分間は最後の1秒まで全力を保てるペースで走っていきます。
ステップ③ 15分間のレスト走でリラックスをする
全力走で重くしたギヤを一気に軽くして、回復することを意識しながら15分間のリラックス走を行います。ペダルを止めずに、軽く走りながらリラックスすることがポイントです。
ステップ④ 20分間のFTPテスト本番
FTPテスト本番を始めます。ラップボタンを押して計測をスタート。最初の1〜2分はペースをつかむように走り出し、20分間を過ぎてラップボタンを押して終了。この20分間の平均を基準にFTP値を算出します。
20分間の平均パワー(ワット)×95%=FTP値
20分間のFTPテスト走の後には、10分間程度のクールダウン走を忘れずに行いましょう。
ステップ⑤ 何度かFTPテストを行い、自分のペースを正確につかんでいく
1回のFTPテストでは正確な数値は計測できないことが多いため、別日に何度かステップ①〜④のテストを繰り返し行いましょう。その際、「前回のデータよりも○◯ワット上げてみる(下げてみる)」など繰り返すことでFTPを正確につかむことができます。
また、次のステップ⑥からトレーニングを始めた後も定期的にFTPテストを行うことで、自分の進歩を確認することができ、モチベーションの維持にもつながります。
ステップ⑥ FTPテストのデータをもとに自分のパワーゾーンを設定する
テストの数値から算出したFTP値をもとに、自分のパワーゾーンを設定します。
まずFTP値の91〜105%がFTPゾーン。このゾーンよりも強度が強いのが、Vo2MAX(FTP値×106〜120%)、アナエアロビックキャパシティ(FTP値×121〜159%)、ピュアスプリント(FTP値×160%〜)。
逆に弱いのが、テンポ(FTP値×76〜90%)、エンデュランス(FTP値×56〜75%)、アクティブリカバリー(FTP値×〜55%)となります。
FTP値から算出するパワーゾーン | |||
内容 | 強度 | FTP% | 感覚 |
ピュアスプリント | 強 | 160%〜 | 最大限、限界・・・ |
アナエアロビックキャパシティ | ↑ | 121〜159% | 非常にキツイ |
Vo2MAX | 106〜120% | かなりキツイ | |
FTP | 91〜105% | 1時間持続が限界 | |
テンポ | 76〜90% | 少しキツイ | |
エンデュランス | ↓ | 56〜75% | 長時間走れる |
アクティブリカバリー | 弱 | 〜55% | 楽に走れる |
自分自身のパワーゾーンを把握した後は、目標別に各ゾーンを組み合わせたトレーニングメニューを実践していきましょう。