サイクリスト医師リエチ先生の自転車生活のススメ② 自転車で健康になる6つのこと

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自転車通勤からサイクルライフをスタートし、今ではトライアスロンにも出場する整形外科医のリエチ先生こと蔵本理枝子さんが、自転車で健康になる秘訣を伝授!
第2回は自転車運動で健康になる6つのポイントについて解説してもらいます。

蔵本理枝子/医療法人社団理光会 いとう整形外科副院長
日本整形外科学会認定専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、障がい者スポーツ医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。整形外科医として勤務する傍ら、運動器(骨、筋肉、関節など)の痛み一般、スポーツに関わる痛みで悩む人々へ向けて、スポーツ雑誌、インターネットサイト、スポーツ新聞などのメディアを利用して情報を発信している。

サイクリングは、ちょっと息が切れる程度の“辛くない”有酸素運動のひとつです。関節への負担が少なく、長時間景色を楽しみながら継続できるので、運動を習慣にしたい方にはぴったりです。有酸素運動が習慣になると、健康になることが期待できます。ここでは自転車で健康になる主なポイントについて紹介します。

自転車運動で健康①/生活習慣病が改善する

人間ドックや健康診断を受けた際に、肥満や高血圧、2型糖尿病、脂質異常、尿酸、脂肪肝などの項目が引っかかってしまった場合は、生活習慣病の心配があります。

生活習慣病とは、食習慣や運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群です。日本人の3大死因であるがんの一部・脳血管疾患(脳梗塞など)・心疾患(心筋梗塞や狭心症など)、さらに脳血管疾患や心疾患の危険因子となる動脈硬化症・2型糖尿病・高血圧症・脂質異常症などはいずれも生活習慣病であるとされています。

有酸素運動である自転車は、このような生活習慣病のリスクを低下させると言われています。週5日、1回30分程度の汗をかく程度の負荷で自転車運動を心がけましょう。30分間運動を続けるのが難しいのであれば、10分×3回に分けて自転車に乗るのでも構いません。また平日に運動時間を取れない方は、週末にまとめて120〜150分のサイクリングに出かけるなどの工夫をしながら運動を続けましょう。

自転車運動で健康②/全身の筋力アップやシェイプアップが期待できる

自転車運動は、とくに下半身の筋力強化に効果的です。買い物用自転車(ママチャリ)を、サドルが低いまま乗ると太ももの前側の筋肉を中心に使うことになりますが、サドルを高めに設定して、脚全体を使って効果的に自転車を漕ぐことがポイントです。太ももの裏やお尻の下、ふくらはぎなど、なかなか鍛えることができない筋肉が使えるので、脚のシェイプアップが期待できます。

漕ぐときは、足の裏についたガムを地面にこすりつけるように漕ぐとより効果的です。サドルの高さは自転車の種類や個人の身体の機能にもよりますが、まずはサドルに跨った時に両足でつま先立ちできるくらいの高さで試してみるといいでしょう。不安な方は足裏全体が軽く着く感じでも構いません。サドルの高さが適正な高さになると、サドルの位置が低い時と比べて速く走れる上に、疲労度が低いという研究結果があります。また、短時間でもエネルギー消費量が高いというメリットもあります。e-BIKE(電動アシスト自転車)の場合は、余力があれば平地ではスイッチを切るなどして、ちょっと負荷をかけてみることもおすすめです。

ロードバイクなどのスポーツ自転車のように前傾姿勢がより強いタイプの自転車では、上半身の姿勢を維持するために腕の筋肉や、体幹の筋肉をより動員させて運動します。全身の筋力アップ、シェイプアップという点ではスポーツ自転車がより効果的と言えます。

自転車運動で健康③/ひざ痛や腰痛がある人も運動を楽しめる

運動を習慣にしようと思っても、加齢などによるひざ痛や腰痛のためになかなか踏み切れないという方も多いと思います。たとえば、ウォーキングでは体重の3倍くらいの負荷がひざにかかると言われています。体重が重いとなおさらひざにかかる負担は大きくなるため、ダイエット目的で歩こうと思っても辛くて長続きしない人も多いのではないでしょうか。

自転車は、ひざにかかる体重の負荷が少なくなる上にやや前傾姿勢になるため、加齢による痛みが起こりやすい腰の関節にかかる負担が減り、腰の神経の通り道が広がりやすいので、坐骨神経痛などで悩んでいる方も長く続けやすいのが特徴です。

私が勤める病院でも、「歩くのは100mも辛いけど、自転車ならどこまでも行ける」といった話をよく聞きます。ウォーキングと自転車では実は1分間の消費カロリーは平坦な道の場合ほとんど変わらないので、ひざや腰に痛みがある人は自転車運動がとてもおすすめです。

自転車運動で健康④/慢性的な痛みを緩和させる

いわゆるぎっくり腰や怪我などの急性な痛みではなく、寝起きに腰が痛い、階段の下りや正座でひざが痛いといった症状が長く続いている場合に、安静にするよりは軽い運動が改善に効果的であると言われています。

先ほど、腰痛やひざ痛が出づらいスポーツとして自転車をご紹介しましたが、身体を動かすことで、血流の増加や筋温の上昇、関節を潤滑させるなどのメリットがあり、自転車を無理なく漕ぐことは様々な痛みの改善に繋がる可能性があります。「楽しい、気持ちいい」と感じられる程度で構いませんので、最初は10分程度から、少しずつ自転車に乗ってみるといいでしょう。

自転車運動で健康⑤/うつ病予防が期待できる

多くの研究で、運動がうつ病のリスクを減少させるという報告があります。例えば2018年の医学雑誌『ランセット』に、約120万人のデータを解析してメンタルヘルスと運動の関連性についてまとめた論文があり、運動している人は運動していない人よりもメンタルが良好に保たれているという結論が得られ、チームスポーツ・自転車・有酸素運動やジムでの運動などが効果的とありました。そして、うつ病がある人の方が運動の効果は大きかったそうです。しかし、運動しすぎも負担になることがあり、1回45分程度、週3〜5回程度がストレスの低減に効果的との報告もされています。自分に合った運動の種類や運動量は人それぞれですから、疲れすぎない範囲で続けるのがいいでしょう。

自転車運動で健康⑥/ぐっすり寝られる

自転車などの身体への負担が少なく長く続けられる運動を習慣にすると、寝つきがよくなり、ぐっすり寝られることも分かっています。不眠の方は、自転車運動に加えて朝起きたらすぐに太陽の光を浴び、寝る2〜3時間前までに入浴することを心がけましょう。

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蔵本 理枝子

医療法人社団理光会 いとう整形外科副院長
日本整形外科学会認定専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、障がい者スポーツ医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。整形外科医として勤務する傍ら、運動器(骨、筋肉、関節など)の痛み一般、スポーツに関わる痛みで悩む人々へ向けて、スポーツ雑誌、インターネットサイト、スポーツ新聞などのメディアを利用して情報を発信している。

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