自転車走行中に転倒してしまった時の怪我で一番多いのが“すり傷”です。
すり傷を負ってしまった場合の手当ては、消毒をしてガーゼなどで保護・・・と思っている人も多いかもしれませんが、実はこの手順は正しくはありません。
第4回は“すり傷”の正しい手当ての仕方について解説してもらいます。
まずは水道水で汚れを落として、清潔なタオルで優しく水分を拭く
前回は打撲などの応急処置について説明しましたが、自転車で転倒してしまった場合は勢いがついているので“すり傷”を負ってしまうことが多いです。“すり傷”ができてしまった場合は、まず水道水でしっかり洗って小石や土の汚れを完全に落としましょう。汚れをすべて落とし終わった後は、タオルで水分を優しく拭き取ります。山の中などで水道水をすぐに使えない場合のために、2本のボトルのうち1本は水を入れておき、清潔な状態のタオルを携帯しておくことがオススメです。
汚染がひどく自分では汚れを綺麗にできない、出血が止まらない、痛みがひどい、奥の骨や腱などの組織が見えているなどの状況に加え、糖尿病など感染に弱い基礎疾患がある場合は必ず病院を受診しましょう。
基本的に消毒はなし。ガーゼなどを当てることもオススメしません
“すり傷”は基本的に消毒しません。消毒すると痛いだけでなく、キズを治すための大切な細胞を痛めてしまう原因になるためです。
洗浄後、うるおい環境を保てる被覆材でキズを覆います。この時、ガーゼを当てる方がいますが、ガーゼやティッシュなどを当ててしまうと、あとで剥がす時にキズにくっついてしまい、治りつつある組織をガーゼごと剥がし取り、キズから出た「キズを治す大切な液体(以下、浸出液)」を吸い取ってしまいます。洗った後には消毒せずに被覆材でカバーしましょう。
うるおい環境を保つ被覆材は、キズから出る浸出液の量によって使い分けます。
- 浸出液が少ない
市販のハイドロコロイド絆創膏(「キズパワーパッド®」など)を使用します。
傷を負って最初のうちは浸出液が多くて液体がパッドから溢れ出してしまうこともあります。その際はこまめに貼り直す必要があり、液体がはみ出てきた場合は、剥がしてキズの周囲の皮膚をよく洗いましょう。
- 浸出液が多い
浸出液が多い場合は吸収力が高い素材の被覆材がおすすめです。例えば、「プラスモイスト®」「ズイコウパッド®」「ハイドロサイト®と」いった製品は、浸出液を吸収しながら、キズに付かずにうるおい環境を保つため、何度も交換する手間が省けます。キズよりもひと回り大きくカットしてテープなどで固定し、その上から包帯などを巻くといいでしょう。
サイクリングに出かける場合には、上記の2タイプの被覆材を準備しておくことがオススメです。
被覆材を取り替える際はシャワーでしっかり洗いましょう
応急手当てをして帰宅した後は、被覆材を取り替えましょう。この時もしっかり水道水で洗い、消毒はせずに新しい被覆材を貼り直すようにしましょう。
傷が治っていく経過中に赤く腫れたり、痛みが強くなる場合は、必ず病院で相談することが重要です。
参考サイト/『新しい創傷治癒』
参考文献/『これからの創傷治癒』夏井睦著(医学書院)